タリホーです。

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ゲゲゲの鬼太郎(6期)第33話「狐の嫁入りと白山坊」視聴

昔話の世界では人間と動物が交わる異類婚姻譚や、命を助けた動物から恩返しを受ける「報恩譚」がある。今回の33話はその2タイプの物語を融合させた話としてもなかなかよく出来た話だったと思う。

 

“六代目”白山坊

今回の原作は1967年に発表された「白山坊」。

嫁取りはあくまでも名目で、実際は娘を喰らうのが目的という悪どい狐だが、貧しい人間を金持ちにしている所をみると、その神通力は相当のものだろう。

 

そして今回の白山坊は、娘を喰らう“先代”白山坊を倒し、六代目となった白山坊。文字通り襲名したという訳である。

自殺志願者との契約の下りは原作通りだが、今期の白山坊はシビれるほど律義で男前な白山坊だった。

 

悪魔ブエル

いや~、まさか二週連続で西洋悪魔が登場するとは思わなんだ。

原作やこれまでのアニメを見てない方はわからないが、ブエルは鬼太郎シリーズ屈指の強敵。ブエル自身の能力よりも彼が率いる悪魔軍団が圧倒的な脅威であり、鬼太郎の能力では到底太刀打ち出来ない。

 

そんな彼がどうして白山坊の回に…と思っていたが、今回はやよいの体内に現れたアルカナの指輪を摘出するという役回り。公式サイトでは解剖が趣味と記してあったから、葛見やよいを生きて帰す気はなかっただろうな。

 

先週登場した悪魔ベリアルはベアードの配下だったが、ブエルはどういう立ち位置なのだろうか。アデルの指示に従っていたとはいえ、ベリアル同様西洋妖怪の配下の一員だったらちょっと嫌だな。

先週の記事でも言及したが、悪魔は妖怪よりも上等な存在だし、従うとしてもそれは契約として従う形でいて欲しいというのが個人的な思い。

もしこれでブエルもベアードの配下という設定だったら、6期制作陣は悪魔をナメ過ぎていると言わざるを得ない(怒)。

 

でもまぁ、今回は撃破されずに撤退したので、今後原作のように悪魔軍団を召喚させて本領発揮する可能性は高いのでそこに期待しよう。流石に今回だけの登場だとあまりにもチョイ役過ぎるだろうし。

というか、鬼太郎たちはブエルが悪魔だということすら知らなかっただろうな。知っていたら絶対指鉄砲で撃破していたはず。

 

人間と妖怪の交わり

これまでの鬼太郎は人間と妖怪が必要以上に関わることに難色を示してきた。それはひとえに人間の方が寿命が短く、能力にも大きな差があることが原因なのだが、今回はやよいと白山坊との婚姻に暖かな眼差しを向けていた。

勿論これは犬山まなとの交流によって考えが軟化したせいなのかもしれないし、今回の婚姻が既に約束として決まっていたからかもしれないが、今回の場合はやよいの特殊な境遇と白山坊の能力が関係しているのではないかと思う。

 

やよいは幼少期、先代との戦いで傷を負った白山坊を救っている。言うなれば白山坊にとってやよいは命の恩人である。それから白山坊は命の恩人であるやよいを見守った。奇しくもやよいの父が借金塗れで自殺しようと山を訪れ、その窮状を救うことと引き換えにやよいを嫁にもらうことを約束した。この嫁取りは白山坊なりの恩返しであり愛情表現だったと思うのだ。

しかしやよいの父の因果律を歪めたことでそのツケが不運という形でやよいに振り掛かることになった。不本意ながら恩を仇で返すことになったのだから白山坊のやよいに対する不憫の情はただならぬものだっただろう。

その結果、やよいは外界に出すと危ないと判断された父によって屋敷内に半ば軟禁の形で生活することになった。

 

ここで第23話「妖怪アパート秘話」を思い出してもらいたい。あの回ではろくろ首達は幼少期の夏美が人間社会と関われなくなったらいけないと危惧し、敢えて彼女の前から姿を消した。

そう、23話と今回の33話はある意味鏡のような関係なのだ。23話は人間が社会できちんと生きていけるように妖怪が身を引いた。一方今回は妖怪が必要以上に干渉してしまった結果、一人の人間が社会から隔絶されてしまった。

 

しかし、どちらの話も結果的にはハッピーエンドを迎えている。これはどちらの回も人間と関わった妖怪が彼らなりの責任を果たしているからだと思う。

今回の白山坊の場合、因果律を歪めて不運のツケを負ったやよいを守った。白山坊にとっての命の恩人がやよいにとっての命の恩人となり、互いの思いが婚姻という形で結ばれた。

本来なら人間が妖怪と結ばれてもあまり良いとは言えないが、やよいの場合は社会と隔絶した生活が長かったし、自分を守る術も知らない箱入り娘だから、白山坊との婚姻は却って彼女にとっては幸福だろう。寿命の問題はあるが、白山坊もそれを承知で彼女を愛し続けるのだから相当の覚悟はあるはずだし。

 

その他(豆知識)

・狐と人間の婚姻と言えば、陰陽師安倍晴明の母の「葛の葉」の例がある。ところで、やよいの姓が「葛見」というのは単なる偶然なのだろうか…?

・原作「白山坊」には元ネタがある。それが同著者が貸本漫画時代に描いた作品「庭に住む妖怪」なのだが、気になる方は是非。(『水木しげる 怪奇 貸本名作選 不死鳥を飼う男・猫又』に所収)

怪奇 不死鳥を飼う男・猫又 水木しげる 貸本名作選 (水木しげる名作選シリーズ) (ホーム社漫画文庫)

 

・実を言うと鬼太郎の両親は…。詳しくはゲゲゲの鬼太郎 鬼太郎地獄編」を参照。

ゲゲゲの鬼太郎 7 鬼太郎地獄編 (中公文庫 コミック版 み 1-11)

 

来週は「帝王バックベアード」。敵の大将直々に何をするつもりだろうかねぇ。