タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ナンバMG5ざっくり感想 #5(不良界のトリックスター)

ナンバMG5も(恐らく)残り5話。前に原作のお試し無料版を読んでからだいぶ日が経ってきたので、もう次回以降はほぼほぼ初見と同じ状態です。既読の楽しみもあるが、当然未読・初見が一番面白いことは間違いないので、引き続き楽しみに視聴していこうかと。

 

5話感想

ナンバMG5(10) (少年チャンピオン・コミックス)

今回は原作10巻所収の陣内のエピソードと吟子のエピソード(こっちは読んだことないから13巻以降のエピソードかな?)。これまでは剛と伍代といった友情の物語がメインで描かれていたが、今回は難破一家という家族の物語として、前回の感動とはまた違うハートフルな、ある種の懐かしささえ感じるホームドラマだったなというのが率直な感想だ。

 

吟子のエピソードは後ほど感想を述べるとして、まず市松のトップである陣内のエピソードについて言及していきたい。

原作を読んだ際、やはりこの陣内という男は不良界のトリックスター的存在だという点で他の不良たちとは異質なキャラクターとして描かれていた。それは「OL5人を彼女にしている」とか「株で一千万儲けた」とか「餃子150個を食べた大食漢」といった断片的な情報からでも十分わかることではあるが、ドラマでも描かれていたように難破一家や白百合高校といった相手の懐にスッと入り込む能力があるのが、相手に警戒心を抱かれがちな不良とはまた違う彼の性質を物語っていて、そこに異質さというかある種の妖怪じみた不気味さを感じてしまう。

この不気味さを醸し出す要因として私は彼に歴史がないというのも挙げられるのではないかと思っていて、他のキャラクターは生い立ちだったり境遇だったり多かれ少なかれ言動の裏付けになるような歴史・背景描写が描かれているが、陣内に関しては先ほど挙げた断片的な情報と、これまで何でも人並み以上にこなせた分、退屈で歯ごたえのない人生を送ってきたという情報くらいしかない。言い換えれば自分が「これだ!」と執着するようなものがない、というのが陣内のパーソナリティーなんじゃないかと私は考えている。

今回は猛という自分の人生の中で容易に超えられない壁を見つけたから彼に(一時的ではあるが)依存し、劇中で描かれた非情な手段を以て目的を果たそうとした。この辺りの目的のためなら手段を選ばない性格も彼の恐ろしい所と言えるだろう。先ほど挙げた相手の懐に入る能力と合わせて陣内の性格を一言で例えるなら「生来の詐欺師」とでも言うべきで、彼が悪の道へ進んだら相手をマインドコントロールで支配したりする、かなり悪質な犯罪人になるんじゃないかな。

幸いにも剛とのタイマンを果たしたことで悪い方向に走ることなく、自分が執着出来るものを探しに外の世界へ目を向けることが出来たが(本人自身の自浄作用もあるだろうから決して陣内が根っからの悪だとは言わないよ?)、この時「人が人を好きになるのって、楽しいことなのか?」って聞いていることを思うと、やはりOL5人との交際は「好き」とか「楽しい」といった感情で付き合っていたのではないのだろう。

 

陣内に関してすっごいネガティブなことばかり書いちゃったけど、これは裏を返せば彼の性格って凄いカリスマ性を秘めているということでもあり、他者の人生を変えるエネルギーを持った存在でもあるってことなんだよね。だからそこが魅力的という点で原作を読んだ時の陣内の印象と、栁俊太郎さんが演じた陣内は全く同じだった。

 

吟子のエピソードから見る難破家の家族観

吟子のエピソードでは難破家が吟子のためにいわゆるシャバい家族を演じるというコミカルな一幕があった。娘のためにあれだけ変装までして佐藤君を歓待するって普通はなかなか出来ないだけに、家族愛というかハートフルというか、令和ではすっかり見かけなくなったホームドラマ臭溢れる展開だったと改めて見て思う。

この内容だけ見ると、「あれ?剛も正直に言ったらシャバい高校生活許してもらえるんじゃないの?」と思った方もいるのではないかと思うが、吟子と違って剛には全国制覇という難破一家が決めたレールが横たわっているため、そこの家族価値というか掟みたいなものを壊すのは容易でないはずだ。

私の印象として難破家は女性の方が開放的というか自由主義的な感じはするけど、男性の方は生まれた時から生き様――世の不良共を制圧し、ある種の「百獣の王」として君臨する――を決められているという不自由さがある。そこら辺が差別的というか、ある意味歌舞伎みたいにその家の伝統芸能として継承されなければならないものとして固定化しているというか、文化継承としての不良とその実践(つまり全国制覇)が根底にあるという感覚だろう。