ここの別荘って「ミステリと言う勿れ」のアイビーハウスと同じだ。#城塚翡翠
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2022年12月11日
録画を消しちゃったから比較出来なかったけど多分そうだと思うよ。
(以下、ドラマのネタバレあり)
「生者の言伝」
今回のエピソードは『invert Ⅱ 覗き窓の死角』に収録されている「生者の言伝」。
とある計画を実行に移すために友人の別荘へと侵入した夏木蒼汰は、友人の母親と出くわしてしまい不法侵入を咎められてしまう。もみ合いの末、夏木少年が気が付いた時には彼女はこと切れており、自身の右手にはナイフが。逃亡しようと思ったものの、折悪しく外は嵐で激しい雨が降っており、更には誰かがインターホンを鳴らしてきた。インターホンを鳴らしたのは、土砂崩れで足止めを喰らった城塚翡翠と千和崎真だった…というのが本作のあらすじ。
物語の冒頭部分は Amazon で試し読みが可能なので一応目は通しておいたが、ドラマではあまりハッキリ言及されていなかった夏木少年の境遇(母親からの虐待・学校でのいじめ)について記されており、夏木少年は家にも学校にも自分の居場所がなかったことが窺える。
それはさておき、今回の物語のシチュエーションといいサブタイトルの「生者の言伝」といい、明らかに古畑任三郎の「死者からの伝言」を彷彿とさせる。「死者からの伝言」も犯人の予期せぬ来客によって事件が暴かれるし、嵐の山荘という舞台も合致している。また、夏木少年がこの家の人間を装うという点から同じく古畑の「間違われた男」を思い出した方もいただろう。もっと指摘すると、翡翠が夏木少年に対してかけた言葉なんかは古畑の第三シーズンで放送された「再会」に通じるものがあるのではないだろうか。
古畑をオマージュしたと思しき要素を各所に散りばめ、ウブな少年が女性二人(特に翡翠)に翻弄される様を見所にしている一方、このプロット自体が本作におけるトリックの役割を果たしているのが面白い所で、古畑を意識してドラマを見た視聴者が家に潜んでいたもう一人の犯人の存在に気付けないよう仕組まれているのが本作の倒叙ミステリとして異色なポイントだ。
夏木少年の嘘やもう一人の犯人の存在を示す手がかりは、泥の付いた車・泥の付いた男ものの靴・玄関前に置かれたボストンバッグ・濡れ跡のない風呂場・洗濯機・夏木少年の額のたんこぶ・窓際に置かれた革製のカバン・ロールケーキといった具合に前回や初回のエピソード以上に数が多く、視聴者も十分謎解きが可能という点でフェアだったと言える。
特に玄関にあった男ものの靴に関しては、ドラマの冒頭で夏木少年がいた部屋に彼の靴がちゃんと映っているし、翡翠たちが訪れた後に夏木少年が再度部屋にあがった際にも靴は映されていたので、玄関にあった泥の付いた靴が夏木少年のものでないと論理的に推理することは可能だ。初見では翡翠のこの辺りの推理がさらっと語られていることもあってすぐには理解出来なかったが、映像をしっかり見ていれば納得がいくよう作られていたのでそこは評価したい。
ただ今回惜しいのが何故夏木少年が友人の別荘に侵入したのかが説明不足でイマイチピンとこない点だ。所持品にロープがあり家出をしていたと劇中で言及されていたから首吊り自殺が目的だったことは何となくわかるものの、じゃあ何故わざわざ友人の別荘で自殺をするのか疑問に思うし、そんなことをしたら却って友人に迷惑がかかるのでは…?と首をひねった。
これを合理的に解釈するなら、この別荘は友人の家族の別荘ではなく自分をいじめていた子の家の別荘という仮説だ。いじめっ子の家の別荘だったらある意味いじめっ子に対する復讐にもなり得るし、死に場所が死に場所なだけに警察もキッチリ調べていじめの内情を明らかにするだろうからね。でも原作の冒頭でその友人は夏木少年にとって「唯一無二の親友」と書いてあるからいじめっ子に対する仕返し込みの自殺という仮説は違うみたい。
まぁ結局のところ原作を買って読まない限りこの疑問は解消されなさそうなので、原作未読の方は是非読んでみてはいかがだろうか。私も確かめたいけど単行本は高いんだよ…。文庫本だったら手が出るんだけど。