今日配信された4話は再来週の8月26日までの配信。
海座頭・船幽霊
海座頭も船幽霊も日本の海上に現れる妖怪。船幽霊は船を難破させる伝承が各地に伝わっているが、海座頭の方は正直伝承があるわけではなく、鳥山石燕の絵として伝わっている程度の情報量で、船を沈めるといった妖怪図鑑の情報は後付けの設定と言われている。
アニメでは両者とも1期から登場し、船幽霊は海座頭の手下として登場するが、唯一4期の船幽霊は海和尚という別の妖怪に使役されている。海座頭は2・4期を除いて登場するが、3期の海座頭は海上での争いで死んだ者たちの魂を鎮める妖怪として登場。人間たちが戦争の歴史を忘れ海上で争いをしたため船を沈めるというアニメオリジナルの動機が設定された。今の所この3期の海座頭だけが良識ある妖怪として描かれており、あとは財宝目的のため人間を船幽霊に変えたり人間の子供を食べようとしてさらったりと、私欲で悪さをする妖怪として描かれている。
一反もめんのハードボイルド的物語
今回はタイトル通り一反もめんのメイン回。鬼太郎のオープニングトークから5期の一反もめんは布の付喪神という扱いだとわかるが、妖怪図鑑の一反もめんの項目をよく読めば「布のようなもの」として記されている。つまり厳密には一反もめんは布の付喪神と言い切れないのでそこは留意してもらいたい。
物語は伊豆の海沿いの街。海座頭に狙われた綾という少女を助けるため一反もめんが頑張るストーリー。そしてこの回からぬらりひょんが関わってくるため8話の前哨戦的な位置づけでもあるのがこの回の特徴だ。
そして改めてこの回を見るとハードボイルド的な物語だなと思った。あいにく私はハードボイルド小説はあまり読んだ経験がない(『マルタの鷹』とか葉村晶シリーズ程度)のでハッキリと定義づけられないが、こだわりのある一反もめんの性格とか、明確な理由もなく少女を助けるプロットとかを見ると、やはりハードボイルドの骨子はあるなと感じる。
ハードボイルドさを後押しするのは劇中でも指摘されているように一反もめんのポーカーフェイスな一面も関係していると思う。ハードボイルドも基本客観的描写を主とし、あまり内面的な部分に立ち入らない。それゆえ表面的には冷血・非情に見える主人公をどうカッコよく魅せるか、行動・態度でどれだけ内面を表現するかがポイントとなってくるのだ。
特にハードボイルドさを感じたのは一反もめんが苦手な乾燥機で自分の身体を乾かした点。あくまで自己主張せず相手に乾燥したての布の温かさやふかっとした感触で努力を感じさせているのがハードボイルドっぽくないだろうか?
一反もめんの声を担当しているのは3期と同じ八奈見乗児さん。タイムボカンシリーズのボヤッキーの声を担当している方なので3・5期の一反もめんにはひょうきんなイメージが付いてくるが2期以前はそもそも台詞がなかったりあってもちょっとだけなので、今日の一反もめんのイメージは3期の影響が強く、これに関しては4・6期も影響を受けていると思う。そもそも鹿児島弁をしゃべる設定にしてから3期発祥だからね。
そんな八奈見さんのひょうきんな声はハードボイルドの持つ冷血さというか非情さを軽減させているのに役立つ。とはいえ今回はあくまでもハードボイルド“的”なので冷血さが軽減されたというよりは言葉のトゲトゲしさがなくなった、というのが正確な表現だろう。それに一反もめんのハードボイルド要素は回が進むにつれてなくなっていく、というかほぼ今回だけの要素なのでこの回を見て5期の一反もめんがハードボイルド精神の持ち主などと思わないように。
ささやかなツッコミ
最後に蛇足ながら今回のツッコミを少々。
一反もめんが綾と出会った翌日の下りで綾を抱きかかえて上空を飛んでいる場面(動画の8分20~30秒辺り)があったが、あの体勢だと頭と足がかなりしんどいと思う。支えられているのは腰の部分だけで頭と足は重力で下にいくのだから本来は物干しざおに干された布団みたいにくの字に折れ曲がっていなければならない。
あと母親が入院中とはいえ、綾の父親は子供に料理を任せっきりで良いのかとツッコミ。裁縫が出来るから手先が不器用というわけではなさそうだが、サラダが卓上にあったし包丁を使ったのは間違いなさそう。少なくとも綾は小学生っぽいし一人で包丁を持たせるのは怖い年ごろだから、私なら弁当を買って帰るか余裕があれば一緒に料理するとかして一人で料理はさせない(手が切れない安全包丁とかもあるからそれを使った可能性もなくはないが…)。本筋とは関係ないが、この描写一つでいわゆる「働き方改革」がなかった、或いは育児休暇に不寛容な時代だったのだなと振り返る材料になると思う。
次回はアニメオリジナルの沼御前の物語。2期のあの名作を取り入れた回でもあるのでそれについても言及しよう。