タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

意外な黒幕…でもねぇな… ネメシス7話視聴(ネタバレあり)

ネメシス6 (講談社タイガ)

マジで意外じゃないのですよ。これが。

 

(以下、ネタバレ解説していくので要注意)

 

7話「嘘と裏切り」

暴露系動画配信職人・タジミンの恐るべき犯罪を、逆に見事に暴露してみせた【探偵事務所ネメシス】の3人=探偵助手の美神アンナ(広瀬すず、自称名探偵の風真尚希(櫻井翔、社長の栗田一秋(江口洋介。今回の依頼者は、タジミン逮捕へ向け【ネメシス】と共闘したジャーナリストの神田凪沙(真木よう子。(第6話)凪沙はアンナの失踪中の父=始(仲村トオルが起こした19年前の事故で、美神原文ママ芽衣子(山崎紘菜と共に亡くなっていた風真の元同僚=神田水帆(真木よう子/2役)の妹だった。凪沙の依頼は、タジミンに多額の金を払い、凪沙が追っていた臨床試験の不審死”報道をもみ消させたコンサル会社社長=烏丸(宇野祥平の正体を一緒に突き止めてほしいというもの。烏丸と菅研究所=通称・カンケンが繋がっていることを確信した栗田は、「アンナに20年前の事件については一切口外しないこと」を条件にこの依頼を引き受け、凪沙と共に捜査に乗り出す。

早速烏丸の素行を洗う風真だったが、烏丸はいつもどこかに携帯で連絡を取っているだけ。しかも屈強なボディガード・志葉(板橋駿谷)が四六時中張り付いており、全く近付けない。だが烏丸が毎週違法な賭博に通っていることを突き止めた風真に、栗田は烏丸のスマートフォンのデータを奪うことを命じる。そこで風真が協力を求めたのは、かつて風真が弟子入りしていた元凄腕詐欺師のマジシャン・緋邑晶(南野陽子。緋邑にイカサマ術を教え込まれ、アンナと共に違法賭博に潜入する風真だったが、カンケンの魔の手はすぐそこまで迫っていた……。(後略)

(あらすじは公式HPから引用)

前回からいよいよドラマの縦軸枠――20年前の謎――に近づいてきたドラマ「ネメシス」。これまでの内容から遺伝子研究絡みの人体実験が本作最大の闇であり、アンナの父の失踪が彼女自身の出生に深く関係していることは大体の視聴者が察していると思うが、では黒幕となる人物は誰なのか?

公式HPや予告で既に黒幕となる人物が劇中に登場していると聞いたので、一応7話放送前に黒幕を予想した。

 

やはり既出の登場人物で一番怪しいのは四葉朋美だろう。劇中で登場する人物は必然的理由でネメシスに訪れたり、或いはネメシスの要請によって駆け付けたりするのが基本だが、その中で唯一偶然にアンナらと出会ったのは朋美しかいない。朋美は3話の遊園地でアンナと出会い、それ以降度々ネメシスに出入りしているというのがいかにもスパイらしい入り方というか、事件解決の恩義に付け込んでうまいこと潜入した感じがする。それに偶然出会った朋美が何故かアンナと同じ独特な味覚の持ち主で、アンナとは別種の数学の天才というのもあまりにも出来過ぎた偶然だ。

 

黒幕予想はこれくらいにして。今回の脚本協力は『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞した青崎有吾氏。氏の作風はエラリー・クイーンばりのロジカルな推理と変人たちの掛け合わせの巧さにあると言って良いだろう。高校生探偵・裏染天馬が活躍するシリーズはそんな氏のロジカルなミステリとしての面白さと、裏染の「アニメオタクで学校の部室で寝泊まりしている」という風変わりなキャラクター性を楽しめるのでおススメだ。

今回の小説版は来月発売予定のため、小説版については後日加筆したいと思う。

 

※加筆しました。

(2021.06.16追記)

小説版を読んだ。小説版も烏丸のスマホデータを盗むという目的は同じだが、小説版は2つの賭けが用意されており、特に2つ目の賭け=烏丸のスマホの暗証番号当ては読者も推理で当てられるフェアさと難しさを備えたゲームになっているので是非読んで挑んでみてはいかが?

 

小説版との差異

・タイトル:「カジノ・イリーガル」→「嘘と裏切り」に変更

・烏丸と志葉の容貌・年齢が変更

・風真と緋邑の関係が変更(小説版はほぼ初対面)

・烏丸と接触した場所:地下の違法カジノ→料亭風の賭博場に変更(花札メイン)

烏丸のスマホデータを盗む方法が大幅に変更

・志葉とアンナの格闘シーンが変更(ドラマはリュウ楊一が加勢している)

 

事件について

今回はミステリというよりは実質騙し合いのコン・ゲーム的な内容のため特別言及するようなことはないが、劇中で用いられた花札のすり替えトリックや烏丸のスマホを掏るトリックのシンプルさは青崎氏の『ノッキンオン・ロックドドア』で登場する糸切美影の流儀に近いものがあるのではないだろうか。ただ、トリックがシンプルでも面白いのはミスリードの巧みさがあってこそ。今回のドラマではこれらのトリックが視聴者への騙しに密接に繋がっていない――あくまで騙しのターゲットは烏丸――ため、青崎氏の力量はあまり活かされていなかったのではないかと思う。緋邑のキャラ設定は青崎氏の作品っぽかったけどね。

 

で、後半の重要な事実――20年前の事件に関わる黒幕――についてだけど、朋美じゃなかったね!普通に始の同僚の大和猛流だった!

いや、公式のマーロウのヒントとかいかにも「推理して黒幕当てて下さいね~!」みたいな感じだったから、何かしらのヒネリがあると思ったのに、ストレートに始の同僚が黒幕でしたって、そりゃねーべ…。登場したのも5話と回想シーンにちょこっと出た程度だしさ…。

そして、アンナの出生の秘密についてもこれまた予想通りというか、ゲノム編集によって誕生したベイビーとのこと。アンナを助手にして目立たせないようにしたのはそれだけ彼女が公にするにはあまりにもデリケートな問題を孕んでいる存在だということを示しており、父親の失踪と絡んでいるのだろうなということは前回辺りから当ブログでも少し触れていたからね。まぁ予想の範囲内だったかな?

でもそうなってくると気になるのが朋美と凪沙にも共通する異常な味覚の件。凪沙は姉の水帆が関係者だからまだしも、朋美は今のところ本件と関わりのない人間として扱われているが、果たして関係あるのかどうか。そこが一番気になる。

 

さいごに

今回で講談社タイガとミステリ作家による脚本協力回は終わり、次回以降はアンナの出生についてサスペンス全振りで物語が進展していくと予想される。

総監督の入江氏のツイートから推察するに、今後は遺伝子操作で人工的に天才を生み出すという神の領域を侵す行為にメスを入れていくのだろう。予め生まれて来る子供の性格や資質を遺伝子操作で決められるという倫理上の問題を果たしてドラマでどういう風に描くのか。サスペンス要素を入れながら残り3回でどう処理するのか気になるが、個人的にちょっと物申したいことがある。これについてはドラマ完結後にじっくり語れたらと思う(Twitterでちょっと言及したけどね)。