タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

チームネメシス一世一代の大〇〇! ネメシス6話視聴(ネタバレあり)

ネメシス5 (講談社タイガ)

ドラマも今週から後半戦、感想も筆を出来るだけ走らせていこう。

 

(以下、小説版と合わせてネタバレ解説していくので要注意)

 

6話「真実とフェイクのあいだに」

天狗サーモン・社長怪死の切ない真相を暴きつつ(第5話)、菅研究所=通称・カンケンに一気に近付いた【探偵事務所ネメシス】の自称・名探偵=風真尚希(櫻井翔と社長の栗田一秋(江口洋介。探偵助手の美神アンナ(広瀬すずの失踪中の父=始(仲村トオルが、19年前に起こした事故現場で静かに手を合わせる2人だが、女性のヒールの新しい足跡を見つける。

そして【ネメシス】に今日も新たな依頼者が――。動画配信用カメラで騒々しく生配信をしながらやって来たのは、膨大なフォロワー数を誇る暴露系動画配信職人=タジミンこと多治見一善(柿澤勇人。今をときめく若手人気女優=久遠光莉(優希美青の行方を探してほしいという。実はこの日、車内で覚醒剤を使用しているタジミンと光莉の動画が流出し世間は大騒ぎになっていた。だがタジミンによるとこれは明らかなフェイク動画。2人に恨みを持つジャーナリスト=神田凪沙(真木よう子にはめられたと主張し、凪沙が光莉を拉致しているのではないかと心配する。一方、”神田凪沙”の名前を聞き、今までにない速さで依頼を快諾する栗田だったが、天狗サーモンの一件以来腰痛が著しく悪化している様子。風真とアンナを追い払うよう捜査に行かせるが、その裏で何やら密かに別行動を……?

(あらすじは公式HPから引用)

6話は虚偽報道にディープフェイクといった映像媒体の嘘がテーマの話。虚偽報道自体はさほど珍しくないというか、随分前からそういったことはテレビでもしばしば問題として取り上げられているが、ディープフェイクはここ最近出て来た新たな技術を駆使した詐術であり、この物語の新奇性はそこにあると言って良いだろう。

また動画配信職人≒ユーチューバーの存在も現代ならではで、今回は動画配信職人のタジミンの配信動画が事件に深く関わってくる。

 

そして、1話から度々回想などで挿入された20年前の事件に関して始の失踪につながる重要な関係者=神田凪沙が登場。公式HPを見ればわかるように、始の失踪前に車に乗り合わせていた神田水帆とは双子の姉妹の彼女がネメシスにどのような情報をもたらすのか、そこにも注目したい。

 

小説版との差異

・恵美佳に関する報道:人体実験→臨床試験の副作用による死に変更

・ドラマの姫川はアンナの推理力を事前に知っている(第4話)。ただしその前に空間没入することを知らないのは小説版と同じ

・光莉の監禁場所:京浜ネジ製作所→相模鉄工所 横浜工場に変更

チームネメシスが仕掛けた計画の伏線を追加

 

事件について

今回の犯人については結構わかりやすい。そもそも物語自体が「映像媒体の嘘」をテーマにした作品なのだから、動画配信を日常的に活用しているタジミンくらいしかそのテーマに即したトリックを仕掛けられる人物はいないし、何より当初から自分をシロの人間としてアピールしていることや名前が「一善」というのも胡散臭さに影響を及ぼしている。

更に言えば、タジミンが犯人として糾弾した凪沙は公式HPでネメシスのサポートメンバーである上原や星らと名を連ねているのだから、仮に光莉の拉致が凪沙の仕業だったとしても、それが悪意あるものでないことを視聴者が推測するのは決して難しくないことと思う。それに前回みたいに怪しい容疑者が他に複数いなかったしね。

そういう理由で、公式HPの情報を合わせずともタジミンが拉致事件の黒幕だと推測するのは簡単なので犯人の意外性についてはほぼ皆無(特にミステリマニアなら)だが、今回の事件はむしろ犯人が明かされてから後、解決部の犯人追及場面が最大の見どころだ。

 

タジミンが本作で利用したのはドラム缶とロープを利用したアリバイトリック。窓枠に固定した被害者とドラム缶をロープで結び、ドラム缶に水を入れて小さな穴を開ける。水が徐々に抜けることで被害者を支えていたドラム缶が軽くなり被害者だけが窓から転落するという時間差を利用したアリバイトリックだが、これ自体は大したことがなくむしろ漏れ出た水を誤魔化すために水道を開けたままにして、(一見すると)床に下足痕が残らないようにしたと見せかける偽装工作がミステリとして優れたポイントだろう。当然水が抜け被害者を支えられなくなるのはどのタイミングになるかは事前に予行演習する必要があるし、そこから逆算してアリバイの証人を作らなければならないので、今回のトリックはかなり計画性の高い犯罪であることは間違いない。

 

で、それだけの知能犯をどうやって追い詰めるかとネメシスメンバーが徹夜で計画した2つのプラン(Aプラン・Bプラン)について。

「Aプラン=死んだと思われた光莉をタジミンの前に出し観念させる」はこれまでのドラマでもよくある手法で、これだけだったら本作は凡作止まりだったが、この次のプランこそ本作のテーマにも通じる大トリックになっている。

「Bプラン=監禁場所ではなく別場所であることをバラし観念させる」はタジミンが盗撮・盗聴を探知する装置を所持したことを見越して、タジミンの自白を引き出しそれを確認する有効な証人を外側=撮影スタジオに組まれた工場のセット外に警察(タカ&ユージ)やテレビ関係者を配置させておくという、かなり大がかりなものになっている。更に、このトリックを成立させるためにはタジミンを実際の監禁場所からスタジオまで移動させる必要があり、その役割として配置された上原黄以子の存在が効果的に活かされているのも見逃せない。医者という立場からAプランの光莉の死を偽装させることは勿論、酔い止めの薬と称して睡眠薬をタジミンに違和感なく飲ませることが、黄以子のスピード狂の設定と結び付けられているのが秀逸であり、これによって楽にタジミンを偽の監禁場所まで移動させることが可能なのもよく出来た点だと思う。

ただし、ドラマではタジミンに睡眠薬を飲ませてないため、撮影スタジオに移動させる時に気づかれなかったか少々疑問ではあるが…。まぁ風真が劇中で言わなかっただけで実は映像で流されてない所で飲ませていたかもしれない。もっと想像力を働かせるならば、柿原が寝技をかけてオトした可能性もあるし、タジミンに被せた麻袋に催眠ガスを充満させてたとか他にも色々やり方はあるので、大きな問題点ではないが。

 

ちなみに、ドラマでは偽の監禁場所(撮影スタジオ)を示す伏線として監禁場所にあるはずのないドラマ台本があり、床に落ちていた偽物のナイフが序盤の撮影スタジオの場面でアンナがそれを触っている下りが挿入されており、一応視聴者にフェアな作りになっている。小説版にはないドラマならではの伏線としてこれは有効だったと思う。

 

さいごに

今回は犯人自体が仕掛けたトリックとネメシスが犯人に対して仕掛けたトリックの二重構造によって映像作品ならではのミステリに仕立て上げられているのが評価ポイント。こういった映像の枠外の面白さを意識した物語は映画カメラを止めるな!を彷彿とさせる。

次回からはいよいよ縦軸枠の20年前の謎が絡む事件となる。19年前の回想場面や遺伝子研究といった要素から鑑みるに、アンナの出生に関する暗部を暴いていくことになるのは間違いなさそうだが、風真の経歴についてはそれとどう関わるのか気になる所である。また黒幕に関しても絞り込みは可能らしいので、考えてみてはいかがだろうか。私は一人疑っている人物がいるが、多分外れていると思うのでまた次回以降話せればと思う。