タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

小説版と全然違う! ネメシス3話視聴(ネタバレあり)

ネメシス1 (講談社タイガ)

遊園地で爆弾と聞くと古畑任三郎のキムタク犯人回を思い出すタリホーです。

 

(以下、小説版と合わせてネタバレ解説していくので要注意)

 

3話「美女と爆弾と遊園地」

ラッパー志望の青年=樹(窪塚愛流の冤罪を、見事に晴らした【探偵事務所ネメシス】。(第2話)2度も事件を解決し、さぞ大忙しの日々……と思いきや、屋上でのんきにカラリパヤット(インドの古武術)に興じる天才助手=美神アンナ(広瀬すずと、社長の栗田一秋(江口洋介。そして「あ~熱っぽい(ゴホゴホ)」と分かりやすい嘘をついて、早退していったのはポンコツ探偵=風真尚希(櫻井翔。怪しんだアンナ&栗田が尾行すると、おなじみ”チームネメシス”の一員=黄以子(大島優子と、横浜・八景島シーパラダイスで仲良くデート!?怒りに震える栗田だったが、実はシーパラは未曽有の危機に陥っていた!”ボマー”と名乗る連続爆弾魔から、「爆弾をしかけた。明日までに2億円用意しろ」と迫られていたシーパラ。園内を楽しむ1万人の客を人質にとられ困り果てた社長の太宰(浅野和之は、旧知の風真が”磯子ドンファン殺人事件”(第1話)を解決したと知り、救いを求めてきたのだ。あまりに危険な状況にアンナを今回の捜査から外す栗田。ぶーたれるアンナだったが、園内で美人理系大学生=四葉朋美(橋本環奈)と運命的に出会い意気投合。実はこの朋美、アンナに負けず劣らずの天才的な頭脳を持つスーパー理系大学生だったのだ!(中略)それはさておき何枚もうわての”ボマー”は、巧妙な罠を張り巡らしネメシスと警察を翻弄。その罠にまんまとかかった栗田、タカ&ユージ(勝地涼中村蒼は、爆弾がしかけられたバスに閉じ込められてしまう!絶体絶命の危機を、アンナ&朋美の天才コンビは救うことができるのか!?その時、ポンコツ探偵・風真は……?(後略)

(あらすじは公式HPから引用)

3話は実在のテーマパーク・八景島シーパラダイスを舞台にした爆弾騒ぎということで、1・2話よりややスケールのデカい物語。そして記事タイトルでも書いた通り、小説版(1巻所収の第二話)とストーリーが全く違うのがドラマ最大の特徴となっている。一致している点といえば、遊園地で爆弾騒ぎが起こり、アンナ&朋美の天才コンビが事件の謎を解くという大枠部分のみで、それ以外(ネメシスメンバーが遊園地に行く経緯・朋美の能力・身代金の額等々……)は小説版と大きく異なっている。そういう訳で今回は「小説版との差異」及び小説版の解説は割愛させていただく。

 

今回ドラマと小説で内容が大きく違っているのは様々な制作上の理由があったと思うが、一つ間違いなく言えるのはコロナ禍の影響だ。小説版ではパーク内でプレゼントの交換イベントが催されており、”ボマー”はそのイベントを利用して警察を翻弄するというストーリーになっているが、言うまでもなくコロナ禍で不特定多数の人々が接触するのは避けるべき行為であり、小説版の内容通りにするとエキストラの人々同士でクラスターが発生する事態になりかねない。そのためドラマでは”ボマー”の犯行手口そのものを変更する必要性があったと思われる。

 

事件について

今回はそもそも小説版とドラマの内容が大幅に違っており、小説版はサスペンスもありながら、意外な犯人を描いたフーダニットとしても優れたミステリになっている一方、ドラマはほぼサスペンス寄りで犯人も画面外にいる人物※1だったため、視聴者が推理して特定出来るシロモノではなかった。せいぜい視聴者が頭を働かして正解を導ける部分があるとすれば犯人”ボマー”がシーパラ内部にいることと、「爆弾が搭載されたバス※2から、いかにして乗客(刑事たち)を無事に助けだせるか」という救助のハウダニットだろう。

積載重量±30㎏=60㎏の幅があることを利用して、ワゴン車を横付けしながら荷物と人(60㎏以下の人物)を行き来させるという、原始的と言えば原始的だが確実な救助方法をパッと思いついた所に朋美の天才性がうかがえる。まぁ、朋美のような天才でなく文系でも60㎏の幅に気づければこの救助方法を導き出すことは可能なので、難易度としては1話完結の事件としてちょうど良かったのでは?

 

ちなみに、朋美が劇中で”ボマー”の潜伏先特定に用いたヘルムホルツ方程式は電磁波の放射・地震学・音響学といった物理学でも使われる方程式なので、全くの嘘デタラメという訳ではなさそうだが、文系の私にはてんでわからない分野のためこの辺りの是非は理系の方に任せたいと思う。

ja.wikipedia.org

 

※1:今回犯人役を演じた駒木根隆介さんは総監督入江悠氏の出世作SR サイタマノラッパー」シリーズで主演をつとめている。

※2:犯人が言っていた「昔そういう映画あったろう」とは1994年に公開されたヤン・デ・ボン監督の映画「スピード(Speed)」と思われる。実は国内で同様のパニック映画が既に制作されており、1975年に公開された 佐藤純弥監督の新幹線大爆破がその先駆けと言えるだろう。

 

さいごに

今回は小説版と違ってサスペンス重視の物語だったが、犯行手口がそれなりに凝ったものだったから、今回はまぁまぁ楽しめたかなというのが正直な感想。20㎏の札束を吊るせるドローンは少々設定として強引な気がしないではないが(苦笑)、キャラ設定含めて浮世離れした部分が多々あるのがこのネメシスの世界観なので、それくらいのことで目くじらを立てるべきではないだろう。

小説版の方がフーダニットとしての面白さや犯行動機・手段も練られた物語になっているためドラマの出来に分の悪さを感じるのは否めないが、小説版と完全に趣を異にした予測のつかないサスペンスに舵を切った制作陣の判断は賢明だったのではないだろうか?