ドラマ公式がゆりりん言っちゃった。#探偵由利麟太郎
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2020年6月30日
等々力がトドは意外だった。#探偵由利麟太郎
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2020年6月30日
いや「トド」で来るとは思わなかった。
(以下、原作・ドラマのネタバレあり)
「殺しのピンヒール」(「銀色の舞踏靴」)
原作は1939年初出。三津木の頭上から落ちて来た舞踏靴が発端となる連続殺人事件で、海外の某名作ミステリと同じトリックが用いられた30頁ちょっとの短編。横溝先生は某海外ミステリでも用いられたこのトリックが気に入っているのか、本作以外にも金田一耕助シリーズや人形佐七シリーズでも同様の類のトリックを駆使した作品を発表している。
ドラマにおける最大の改変は、何といっても踊るピエロ(犯人)の存在。原作でもそれに相当する怪しい老人が登場するとはいえ、ここまで乱歩色の強い改変になるとは思わなかった。そのため、原作以上に劇場型犯罪らしくなっているが、実際はそれとは大いに異なっているのがドラマの改変の重要なポイントになっている。
また、ドラマは三津木が容疑者として勾留されるオリジナル展開があり、それによって由利と三津木の初対面時の回想や、由利の過去に触れられているのが気になる所。特に由利の過去については次週以降も語られる模様なので注目していきたい。
原作の三美人に相当するモデル、鮎沢由美・白川珠子・河瀬文代だが、河瀬は川瀬文乃という名称に変更。白川は珠喜と変更され、名越恭介の妻ではなくなっている。代わりに原作の由美に相当する優美が名越の妻となり、由美の父である鮎沢博士はモデル事務所の社長という形で改変された。
ターゲットが狙われる順番も原作とドラマとでは異なっており、原作は「河瀬→白川→鮎沢」の順になっているが、ドラマは「白川→川瀬→名越(鮎沢)」になっている。原作の方はこの順に特別深い意味はないが、一方のドラマはこの順番に意味があるよう改変が為されている。
計画犯罪→行き当たりばったり
ドラマはピンヒールキラーによる劇場型犯罪という表面的な改変だけでなく、犯行の経過も原作とはタイプが異なっている。
原作の場合は「死体を隠すなら死体の山」という海外発祥のトリックにならって本命以外の人物も殺すというのが最大にして重要なポイントで、変装も特定の人物に罪をなすりつける目的あってのことだったが、ドラマの場合は変装の目的や連続殺人に至った理由が犯人の臆病さに求められているのが面白い点で、そこを軸に犯行のプロセスを変えているのが上手い。
ピエロに変装したのは仮装パーティーという場所に紛れ、顔を隠していても不自然に思われないから…というのは至極当然で、その改変については特に何とも思わなかったが、原作で本命のターゲットだった珠子が間違い殺人の被害者に変えられたことで事件の性質が計画殺人から行き当たりばったりの連続殺人に変わったのが秀逸。
本命の優美を殺せて一安心と小躍りしていたらモデル仲間の川瀬に目撃されてしまい、よりによって自分を特定されかねない時計まで見られる始末。しかもターゲットの優美は死んでいなかったのだから、原作の余裕綽々な犯人とは真逆の結果に。
こういうシリアルキラーものとか劇場型犯罪を扱うミステリは犯人が意図してやったことの場合が多いのだが、今回のドラマはやむを得ずシリアルキラーを演出する羽目になったという部分が個人的には珍しいというか斬新さを感じた。
実際問題時計を見られたくらいで殺すのは臆病が過ぎると思うが(特注なら話は別)、不安要素を解消しておきたいと考えるのは最もだし、殺害手段が刺殺・撲殺といった直接的な手段ではなく毒殺を用いているのも犯人の臆病さを示している。
ちなみに、劇中で「清明のサトウキビ」という毒の話が出て来たが、これはフィクションではなく実際にある毒。日本ではあまり事例がないが知っておいて損はない。
タイトルにも冠されたピンヒール(舞踏靴)は、原作だとあくまでも装飾的・神秘的効果のためでしかなかったが、ドラマは連続殺人を犯さざるを得ない状況でシリアルキラーに偽装するため、脚タレの被害者たちに共通するピンヒールを演出道具に選んでいるので、原作以上にピンヒールの必然性が高まっているのが評価出来る。なおかつこのピンヒールが(皮肉なことに)シリアルキラー偽装の手がかりになっているのも巧い点。由利のトレース技術に基づく探偵術はドラマオリジナルであることは前にも言ったが、今回は特にその探偵術が活かされた事件と言えるだろう(靴のサイズとかローズマリーといった後出し情報が多いのはいただけないが)。
さて、来週からは最後にして最大のメイン「蝶々殺人事件」。
これまでは乱歩風味の演出でもイケたけど、「蝶々」は乱歩風味で誤魔化さず、ちゃんとミステリとして成立させてほしいな。#探偵由利麟太郎
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2020年6月30日
上記のように、これまでや今回のような乱歩的演出は戦前の作品だったからマッチしていた所があったが、「蝶々」は本格指向を意識した戦後のミステリ。原作を読んだ方ならわかると思うが、怪奇趣味やエログロ要素を排除し謎解きに特化した作品だけに、ドラマの方もミステリとして誤魔化しなしの物語も是非とも見せてもらいたいものだ。