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名探偵ポワロ「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」視聴

名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

まっきっば~でくさっかり~♪

 

「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」(「ジョニー・ウェイバリーの冒険」)

愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

原作は『愛の探偵たち』所収の「ジョニー・ウェイバリーの冒険」。前回の記事で述べたが、生憎私はこの短編集未読のため、今回は原作との詳細な比較は無しにしてドラマだけの感想とする。

ポワロシリーズで誘拐を扱った作品はこの他にも「総理大臣の失踪」があり、こちらではイギリスの首相が何者かに誘拐される政治絡みのミステリとなっている。

 

(以下、ドラマのネタバレあり)

 

個人的注目ポイント

・“ハーキュリーズ”・ポワロ

ウェイバリー氏が妻に「ハーキュリーズ・ポワロさんだ」と紹介したが、ハーキュリーズ(Hercules)というのはギリシア神話の英雄ヘラクレスを英語読みしたもの。

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本来の名であるエルキュール(Hercule)はフランス語読みであり、スペルも英語とは若干異なる。ポワロがフランス人と間違えられるのは所作や身なりは勿論、名前のせいでもあったのだ。

ちなみに、三谷幸喜版のポワロは勝呂武尊という名前で登場し、武尊は日本神話の日本武尊ヤマトタケルノミコトを指す。

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ル・マン24時間レース

ヘイスティングスがミス・レモンやポワロに言っていたカーレースの話はフランスのル・マン近郊で行われるル・マン24時間レースのこと。

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1923年に初めて開催された由緒あるレースで、1937年に「ル・マン24時間」というタイトルに改称された。「名探偵ポワロ」の時代設定は1930年代後半となっているため、時代設定の点で齟齬は生じていない。

それにしても、ガス欠という初歩的ミスをやらかすようなヘイスティングスが24時間レースとはね…。大丈夫なのか?(メンテナンス係がいるのなら話は別だけど)

 

・牧場で草刈り♪

ポワロとヘイスティングスがウェイバリー邸へ戻る車中で歌っていたのは「One Man Went to Mow」と呼ばれる数え歌。

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・イギリス式朝食

ウェイバリー邸で出された夕食はカツ一枚と小ぶりのポテト(葉物野菜も映像では確認出来たが)。「イギリス式ディナーには誰も期待しませんよ」とポワロが言ったように、基本イギリス料理は手間をかけず、焼く・煮るといったシンプルな調理法の料理が多い。

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一方、朝食はソーセージやベーコン、トーストにスクランブルエッグと充実度が高く美味しいと言われている。同著者の『ポケットにライ麦を』では、そんなイギリス式朝食の席で混入された毒で死亡する事件が起こる。

劇中ではイギリス式朝食ではなく、米を使ったインド式朝食が出されていたが、これがウェイバリー家の経済事情を示すことになる。

 

・旧家と資産家

ウェイバリー家は歴史ある旧家の生まれであるマーカスに資産家のエイダが嫁入りしたという設定だが、資金を求める旧家と家格を求める資産家の結婚は当時としては珍しいことではなく、アメリカの資産家から嫁をもらうこともあったと言われている。

今回の誘拐事件の動機も旧家と資産家という家柄の違いからくることに起因する。

財布の紐を固く握った妻から金を出させるための狂言誘拐。これだけ聞くと「酷い夫だな」というイメージになるが、執事とその姪にあたる乳母が共犯になっていたことを考えると、周りの人々が抱いていたウェイバリー夫人の印象というのはあまり良いものではなかったのかもしれない。

嫁入りしておきながら財布の紐を握って夫を困らせるケチな妻。狂言誘拐を計画して妻に金を出させる夫。な~んかどっちもどっちで良くない夫婦だ。夫の方が犯罪に片足を突っ込んじゃっているから分が悪いけど、一応使用人が共犯になってくれているところを見ると人望は厚いのだろうな。

それにしても、仮に計画が成功したとして、その後金回りが急に良くなったら流石に妻に疑われるのでは…?女性はそういった勘が鋭いのに。

 

 

次週は「24羽の黒つぐみ」。ポワロシリーズの短編では比較的有名な話だね。