タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

2019年読了書籍ベスト10

今年も残すところあと一週間。去年は出来なかったけど、今年は読んだ本のベスト10を紹介してみようと思う。

今年読んだ書籍(マンガ・歴史書・事典を除く)全48冊(少な…)から選んだベスト10はこちら。

 

1位:青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』

2位:今村昌弘『魔眼の匣の殺人』

3位:法月綸太郎法月綸太郎の冒険』

4位:青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア 』

5位:阿津川辰海『紅蓮館の殺人』

6位:小林泰三『アリス殺し』

7位:アンソニーホロヴィッツカササギ殺人事件〈上/下〉』

8位:似鳥鶏『レジまでの推理 本屋さんの名探偵』

9位:中西智明『消失!』

10位:三津田信三『黒面の狐』

 

以下、選評(或いは雑感)。

 

10位:三津田信三『黒面の狐』

黒面の狐 (文春文庫)

6月読了。今年読んだ三津田氏の作品からはこちらをチョイス。怪談と民俗学的な色合いが強い刀城言耶シリーズの作風とは若干趣が異なる新シリーズ。閉鎖的な炭鉱社会を舞台とした注連縄連続殺人事件は、社会情勢ネタも相まって歴史ミステリ寄りの風格がある。作中で使用された密室殺人のトリックは海外の某密室ミステリを彷彿させるものがあったため面白く読めた。が、謎解きの部分でちょっと引っ掛かる所があったのでベスト5まではいかなかった。

 

9位:中西智明『消失!』

消失! (講談社文庫)

3月読了。以前当ブログでも紹介したが、これは発想の勝利とでも言うべき傑作。死体の消失とミッシング・リンクという二つのテーマを扱った作品であり、今年読んだ中で最も奇想天外・予想外な真相。トリックは申し分ないが、反対に物語的な面白さ(登場人物や物語の奥深さ)は薄いため9位にした。

 

8位:似鳥鶏『レジまでの推理 本屋さんの名探偵』

レジまでの推理~本屋さんの名探偵~ (光文社文庫)

9月読了。似鳥氏の作品はこれが初めて。脚注やあとがきがふざけている印象が強いものの、トリックや謎解きは堅実かつ面白みがあって良かった。書店を舞台にしており、電子書籍でなく紙の本を、そしてネット注文ではなく書店をこれからも応援したくなる一冊。本作を読了後、今まで気にしなかった開店直後の書店の品出しの様子を見てしまうようになった気がする。

 

7位:アンソニーホロヴィッツカササギ殺人事件〈上/下〉』

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

2月読了。今年は特に海外ミステリがあまり読めなかったが、本作はアガサ・クリスティをリスペクトした作品であり、ミステリランキングのトップをとったと聞いたので、「じゃあクリスティ好きとして読まない訳にはいかないだろう」と思い着手した。読了してから日が経っているものの、読書中はずっと心の中で「あるある」を連発していたことは覚えている。「事故か殺人か不明な死」とか「探偵に依頼する女性の下り」とか例を挙げればきりがない。作中作と現実世界の二つのフーダニットをやり遂げたのも凄いし、「見かけ通りではない真相」というのもクリスティ的で好感が持てた。

 

6位:小林泰三『アリス殺し』

アリス殺し (創元推理文庫)

5月読了。単行本を買って積読にしていたらまさかの文庫版が発売され、結局文庫版の方を読んでしまったという、自分の中で過去前例のない行為をとってしまったという点でも記憶に残る一冊。ディズニーのアニメと映画「アリス・イン・ワンダーランド」の知識しかないけど、十分面白かったよ。割とグロい展開もあるけど、不思議の国独特の「話の進まない会話」「うまく噛み合わない会話」がうまい具合にまろやかにしてくれている。あと他の方の感想サイトでも見かけた「異色のダイイングメッセージ」は本当に秀逸だった。

 

5位:阿津川辰海『紅蓮館の殺人』

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

12月読了。探偵小説研究会編著『本格ミステリ・ベスト10』2020年版で国内第三位になった作品。発売前から面白そうだと思っていたが、読んだのはランキングが出てから。確かにこれは名作と呼べるクオリティで、館に仕掛けられた吊り天井による殺人から、終盤における怒涛の「暴き立て」探偵対元探偵という構図、探偵という業を背負った者の宿命など、色々盛った美味しい(けど後味は良くない)ミステリになっている。トップ3までいかなかったのは、本作に登場する探偵役・葛城と助手・田所のキャラ設定が影響している。元探偵との対決構図がありながら、結局は未熟さと己のエゴに潰されている所があるのがちょっと個人的に好きじゃなかったので。

 

4位:青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア 』

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

5月読了。「分業制探偵」というありそうでなかった設定と、気の利いたロジック・トリックがあり、読みやすさも申し分なし。キャラ重視もトリック重視も満足させる短編集になっている。以前当ブログでも言及したが、今一番私がドラマ化を望んでいるミステリ小説。金のかかるセットやトリックを使わないから絶対イケると思うのだけどね。作品を応援する意味も込めて続編は文庫ではなく単行本を買って読もうかしら。

 

3位:法月綸太郎法月綸太郎の冒険』

法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)

9月読了。本作所収の「死刑囚パズル」がヤバいと噂に聞いていたが読めずに悶々としていた折りの復刊、非常に感謝。読んでみたら「何故これが今まで絶版状態だったのか」と疑問に思えるほど。前半部は重い事件、後半部は書籍絡みの軽めの事件と短編集としてのバランスも良かった。来年以降は『新冒険』『功績』も復刊してもらいたいものだ。

 

2位:今村昌弘『魔眼の匣の殺人』

魔眼の匣の殺人

4月読了、12月再読。『屍人荘の殺人』の続編ということで色々ハードルはあがっていたが、前作と遜色のない作品となっている。前作は暗黙のうちに被害者が誰になるのかわかる節があったが、本作では「絶対に外れない予言」によって、誰もが被害者になるかもしれないという緊張感が漂っていたのがポイント。事件自体はかなり地味なのだが、「予言」という特殊設定ならではの謎解きロジックと伏線が素晴らしく、その点は前作を凌いだのではないかと思っている。

 

1位:青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』

むかしむかしあるところに、死体がありました。

5月読了。本作を1位にしたのは心の奥底で「寓話の世界で本格ミステリをやる小説」を私が望んでいたからに違いない。勿論、おとぎ話だからトリックも何でもあり…な~んてことにはなっておらず、しっかり伏線を張り、存在しない道具・モノには「法則」が設けられているので、読者も謎解きが出来るようになっている。(これを読んで本格ミステリにハマるかどうかはともかく)みんなが知っている物語をミステリに仕立て、本格ミステリの間口を広げたという点で今年のベストをこれにした。

 

来年の読書目標

まず今年あまり読めなかった海外ミステリの消化。特に『白い僧院の殺人』『Xの悲劇』の新訳版と『世界推理短編傑作集』の新版の積読を早めに消化しておければ…と思っている。

あとは同じく積読状態の横溝正史ミステリ短篇コレクション』の消化。途中でほったらかしてまだ第一巻も消化出来ていないので…。

そして来年こそはクリスマス時期に『クリスマスに少女は還る』を読むぞ。