タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ゲゲゲの鬼太郎(6期)第80話「陰摩羅鬼の罠」視聴

二週間ぶりの鬼太郎。でも間宮さんのトークショーとかルイージマンション3発売の報とか気になる情報が一杯あったから、個人的には一ヶ月くらい空いた気分だったな。

 

陰摩羅鬼

ja.wikipedia.org

中国や日本の古書に記されたこの妖怪は、死体の気が妖怪化したもの。そこから派生して、死者の供養や経文読みを怠ることを戒めるための妖怪として紹介されている。死者の気が鳥の形で妖怪化するのは、鳥が古代の死生観と深く関わっているためだろうが、話がややこしくなるのでここでは割愛。

 

アニメでは1・3・4・5期に登場する定番の妖怪(1期は「おんもらき」ではなく「いんもらき」と読む)。死体に乗り移ることが出来る妖怪なので、話も基本怪奇色が濃い。が、原作準拠な1期、探偵・刑事モノをパロディした3期、感動路線の4期、ホラー&感動の5期と各期によってテイストは微妙に異なる。

また陰摩羅鬼が悪さをする動機も各期によって異なる。1・5期は住処である古墳の上に家を建てられた復讐のため、3期は財産目当てのため、4期は寺を粗末にして死体の供養を怠ったためだが、こうやって見ると3期の陰摩羅鬼は随分俗っぽい妖怪だったんだな…ww。

 

魂金縛り、或いは秘法絵封じ

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©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

鬼太郎は身体の各パーツを利用した武器で相手と戦うのが基本パターンだが、今回の陰摩羅鬼の様に人間の身体に妖怪の魂が入り込んでしまった場合は「魂金縛り」または「秘法絵封じ」と呼ばれる術を使う。

やり方はまず相手に肖像画を描かせてくれと持ち掛け、それから相手に七十四あるいは百六の質問をする。その答えに応じて紙や石に点を打っていき、最後にその点を素早く結ぶ。そうすると相手の本当の姿が浮かび上がり、描かれた紙や石に相手の魂が封じ込められるのだ。紙に封印した場合は榊の木を燃やした炎で燃やせば相手の魂も焼け死ぬ(ただし、紙が破られると魂は解かれてしまう)。

原作の「猫仙人」「陰摩羅鬼」「魔猫」において使われた術なので、今回の陰摩羅鬼で使われなければもう今後出ないのではと危惧していたが、使われて一安心。

 

死者への執着を断て

さて、今期の陰摩羅鬼回は取り憑く相手も取り憑いた先の家庭事情もこれまでとは異なる。4期の小百合さんは例外だが、1・3・5期では金持ちの御曹司を狙うために陰摩羅鬼は女性の死体に取り憑いていた。そしてその御曹司と死体である女性との関係が恋人同士というのも共通している。

一方今期で狙われていたのは、父親を亡くしたマンション住まいの中学生男子である努であり、取り憑かれていた女性は努の母親だった。

これまでは二人の関係が恋人なので話も悲恋の方向へと向かっていたが、今期は親子の関係なので悲しみのニュアンスも違ってくる。そして話のテーマも勿論違う。

今期で描かれているのは「死を受け入れられない人間」だ。父親を亡くし、更に母親がいなくなることを恐れ、母親の死に向き合えなくなった子供の話だ。これまで陰摩羅鬼に狙われた男性も割と孤独な境遇だが、そこには成人と未成年という大きな違いがある。恋人の喪失も辛いが、未成年で親に先立たれるというのはもっと辛いものがあるはずだ(あんまりこういうことを比べたくはないが…)。

死んでしまった者は甦らない。だから生きている人は故人の冥福を祈る訳だが、未成年の努にとってこれは酷な話。そしてその母親に対する執着心が陰摩羅鬼に付け入るスキを与えたのだ。

 

前述したが、陰摩羅鬼は死者の供養を怠ると出る妖怪という一面がある。「供養」は供え物をして死者の冥福を祈る行為だから、それを怠るというのは死者をぞんざいに扱うということだ。怠るというと死者に対して酷い仕打ちをするイメージを持っている方もいるだろうが、今回の努の様に死者に対して執着心を抱いたり、ずっと故人の死を悲しんでばかりいるのも供養を怠ることになる。故人が安心して旅立てるようにすることが生者・死者のどちらにとっても大切なのだ。

 

ちなみに…。ロシアの怪談で、死んだ夫が妻のもとを訪ねる物語がある。これは以前テレビ朝日系列で放送されたアニメ「怪談レストラン」第17話の「おかえり、あなた!」で紹介されているが、この話も死者への執着を戒めているので是非見てもらいたい。

lineup.toei-anim.co.jp

 

今回の脚本はシリーズ構成の大野木氏だが、良くも悪くも捻りを入れた展開が多いこれまでの作品と比べるとオーソドックスな結末だったな。

定番の鬼太郎が画家として変装をする下りは、今までは相手が金持ちの成人男性だったから説得も家に潜入することも可能だったけど、今回はマンション暮らしの未成年でそれが無理だから、「道端でスカウト」形式で対象に近づいたのはちょっと笑ったがww。

あ、それとまなが同級生の家庭事情に首を突っ込むプロットは『小説 ゲゲゲの鬼太郎 ~蒼の刻~』所収の「貝稚児」を想起させた。ただ、小説の方がもっと後味の悪い展開だけど…。

tariho10281.hatenablog.com

 

 

来週は気分をガラリと変えて、ひでり神!これもまた鬼太郎シリーズ定番の妖怪だから見逃せないよ!